本日はかんざしの峰から足先まで、すべて上質な白べっ甲で製作した、大変見事なべっ甲かんざしをご紹介させていただきます。第一礼装から準礼装、普段の外出着まで幅広くお挿しになれる贅沢な総白べっ甲のかんざし。
近年の上質な白べっ甲材料の在庫状況、また価格高騰からしても、残念ながらもうこのクラスの品質、大きさ、厚みのある総白べっ甲かんざしともなると、今後新たに製作することはかなり難しいでしょう。(2023.09.25)
ご存じのように、べっ甲はタイマイというウミガメの甲羅を使用したもので、その種類は使用する甲羅(部位)の色合いなどにより、大きく3種に分けられます(※1)。黒色の甲羅を使用したものを“黒べっ甲(くろべっこう)”、全体が黄色味からオレンジ色がかった、半透明の透き通った甲羅を使用したものを“白べっ甲(しろべっこう)”と呼びます。
この白べっ甲は甲羅全体の1割程度になるため、べっ甲の中では最も希少性が高く、また価格も高価になります。昔のべっ甲花嫁簪一揃えや、花魁が挿していたのがこの最も贅沢で希少な白べっ甲で誂えたかんざしになります。余談になりますが、よく特上クラスの白べっ甲は、“緑色”に輝くと言われています。
そして黒べっ甲と白べっ甲が交じったものを“茨布べっ甲(ばらふべっこう)”と呼びます。一般の方がべっ甲と聞いて一番に思い浮かぶのが、このべっ甲特有の天然模様のある茨布べっ甲ではないでしょうか。
べっ甲は天然素材故、厚みも大きさもそれぞれにまちまちなので、製品を作るにあたり、先ずはそれぞれの種類のべっ甲のみを集め、“水”と“熱”を加えて“圧着”させて任意の製品を作るにあたり十分な大きさと厚みを持たせた生地を製作します。それから任意の製品を模り、必要に応じ、彫刻や金蒔絵などの装飾を施して商品化します。
ですから、一見同じような大きさの製品でも、べっ甲の品質は勿論ですが、その厚みによっても価格が大きく変動します。
(※1)地域により異なる分別、名称も御座います。またさらにそれらの素材を細分化した名称も御座います。
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