べっ甲には大きく分けて、「白べっ甲」、「黒べっ甲」、そして、白べっ甲と黒べっ甲が交じりあったべっ甲の天然の模様の入った「茨布(ばらふ)べっ甲」の3種が御座います。一番希少性が高く、高価なものは「白べっ甲」。次に「黒べっ甲」、「茨布べっ甲」と続きます。それぞれのべっ甲素材は、その意匠や装飾方法などにより次のように使い分けられます。
「白べっ甲」はその希少性、高価格からあまり華美な装飾はせず、なるべく、べっ甲本来の優しい温もりをそのままに、比較的シンプルなデザインや、高肉彫り(たかにくぼり(ししぼり)や透かし彫り等を施す場合が多いです。また白べっ甲は、礼装用から贅沢な普段使い用のかんざしまで幅広く用いられる材料でもあります。
「黒べっ甲」は白べっ甲とは逆にその黒色から、蒔絵を施したり、パールや珊瑚、翡翠、その他の天然石を添えた装飾が多くなります。元々べっ甲と漆の相性はよく、また黒地に描かれた金蒔絵や螺鈿は華やかに輝き、一緒に添えたパールや珊瑚、翡翠などの宝飾もきれいに映えます。黒べっ甲の場合も、蒔絵や螺鈿の意匠や、添える宝飾などにより、礼装用から普段使いようまで幅広く用いられる素材です。
そして本日ご紹介するかんざしに用いられている「茨布べっ甲」。
べっ甲の天然の模様のことを「布/ふ」と呼びます。比較的白べっ甲の比率が多いものを「上茨布(じょうばらふ)」、半々ぐらいのものを「並茨布(なみばらふ)」などと呼んでいます(地域により異なった呼び名があります)。この布は人の指紋のように、厳密に申し上げればまったく同じものはありません。そういった意味から茨布べっ甲から製作されたものは世界で唯一無二のお品物と言ってもいいでしょう。
希少なべっ甲材料ですが、白べっ甲や黒べっ甲と比べると、まだ比較的豊富にあります。装飾は、蒔絵や螺鈿を用いる場合も御座いますが、どちらかと言うと、白べっ甲同様、あまり華美な装飾はせず、茨布べっ甲本来の天然模様を生かしたシンプルな意匠、透かし彫りなどが多く、また用途も普段使い用のものが多くなります。
時折、このようなべっ甲豆知識的なことも(ブログに)書かせて頂いておりますが、いかがでしたでしょうか。
本日ご紹介致しますかんざしも、天然のべっ甲模様を生かした、世界で唯一無二のべっ甲かんざしになります。(2017.07.掲載商品)
▼「普段使いのべっ甲かんざし|唯一無二の天然模様が美しい、茨布べっ甲かんざし。+べっ甲豆知識。」ブログ2016年01月20日号
https://ameblo.jp/ginza-kanameya/day-20160120.html
▼「普段使いのべっ甲かんざし。唯一無二の天然模様が美しい、茨布べっ甲かんざし。+茨布とは?」ブログ2012年10月11日号
https://ameblo.jp/ginza-kanameya/day-20121011.html
余談ですが、通常蒔絵や螺鈿装飾の施されたべっ甲かんざしや帯留などは、蒔絵師の落款が入りますが、彫り師の銘は入りません。今回ご紹介するかんざしは、日本で唯一の鼈甲専門の彫刻細工師の喜山(藤田誠)氏の手によるものですので、敢えてご紹介させて頂きます。ちなみに、弊社80周年記念のこちらのかんざしも喜山(藤田誠)氏によるものです。
・茨布べっ甲唐草彫りかんざし【hpkbc170704-1】 ¥75,000+税【完売】
(彫刻:藤田喜山/大きさ:約縦127㎜、横79㎜)
・茨布べっ甲唐草彫りかんざし【hpkbc170704-2】 ¥75,000+税 【完売】2017.07.追記
(彫刻:藤田喜山/大きさ:約縦126㎜、横75㎜)
そして次にご紹介するかんざしは、ちょっとユニークな彫りを施しています。
以前、「布包み」という技法の螺鈿金蒔絵のかんざしをご紹介したことがありましたが、その技法を透かし彫りで表現したものになります。白べっ甲の部分をそのまま残し、布の部分に彫刻を施した、大変珍しいかんざしです。
▼「螺鈿金蒔絵の輝きが美しいべっ甲かんざし|布包み|準礼装(セミフォーマル)用の華やかなかんざし。」ブログ2016年03月07日号
https://ameblo.jp/ginza-kanameya/day-20160307.html
・茨布べっ甲唐草彫りかんざし【hpkbc170704-3】 ¥72,000+税 【完売】2017.09.追記
(彫刻:藤田喜山/大きさ:約縦124㎜、横80㎜)
藤田誠(喜山/きざん)
鼈甲彫刻細工師(昭和二十一年長崎生まれ)
鼈甲の装飾品に彫刻を施すことを専門とした細工師で、立体的な彫りから複雑な透かし彫りまでを幅広くこなす名人である。鼈甲を専門とした彫刻細工師はその数を減らし、現在では藤田喜山を残すのみとなっている。
どのようなかんざしがおすすめか、分からないことなど御座いましたら、どうぞお気軽にご来店の上ご相談ください。色々とお話を伺いながら、ご予算を含め、常時取り揃えております数百種類の中から、最もふさわしいかんざしをお勧めさせて頂きます。
「鶴は千年、亀は万年」古来より縁起物として、広く祝事に尊ばれてきたべっ甲。
一生に一度の晴れの舞台、結婚式などに出席される新郎新婦のお母様、ご親族の方、またご列席されるお客様も、是非べっ甲のかんざしをお勧め致します。べっ甲であれば、大切に保存して頂ければ、一生持ちますし、べっ甲職人が磨けば、ほぼご購入当時のべっ甲本来の輝き、美しさが何度でも蘇ります。また万が一、足などが折れてしまっても修復が可能です。そういった意味からも、べっ甲は次の世代へも受け継いで頂ける素晴らしいかんざしです。
※1980年にワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)に日本が批准し、それ以降、べっ甲材料の輸入量は段階的に減っていきました。そして、日本が開催国となった第8回(1992年)締約国会議(加盟国で2,3年に一度開催される会議)が開催された年をもって、それ以降現在に至るまでべっ甲材料の輸入が停止されています。現在制作されているべっ甲製品は、その年以前に輸入した材料を少しずつ大切に使用しながら制作されています。
※天然素材(べっ甲、象牙、珊瑚、真珠等)、貴金属(金、銀、プラチナ等)を用いた手作り品は、 製作時に使用する材料、また加工賃等により価格が変動する場合が御座います。また、ひとつひとつ大きさや形状、装飾などが若干変わる場合が御座います。予めご了承ください。
※べっ甲製品の場合、一見同じ様なお品物でも、使用されているべっ甲の品質や厚み等によって価格が大きく変動いたします。
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